ギメ美術館では、「伝統と現代」のフレームで、毎年アジア出身の現代アートの作家展を開催しています。
幸運にも今年は、日本在住の韓国人アーティストである伊丹潤氏の作品と、長年にわたって収集された彼の
素晴らしい韓国美術コレクションを発表できることになりました。
韓国の古代伝統美術の代表作と伊丹潤氏の建築、家具、絵画における創作活動を示す模型やモデルとの対
話は、根源的な統一が明らかに感じられる美の真髄というものを私たちに理解させてくれます。それは、伊丹
潤氏の芸術の独自性と革新性が、全体のコンセプションだけでなく選択される素材とあらゆるディテールに及
ぶその処理の上でも、自然への抽象的視点を基盤とする芸術の伝統に深く根ざしているからです。作家・蒐集
家である伊丹氏は、高麗、李朝時代の作品に触れて受ける印象を深く考察することで、伝統の制約から脱し、
時代と国境を越える個性と現代性を持つ自身の芸術の骨組みを作り上げています。
この展覧会は、韓国美術部門の学芸員であるピエール・カンボン氏と伊丹潤氏、同様に建築家であるその
Ehwa
Yooさんの親しい交際に、私達もまたパリと日本の両地で参加させていただいたことで実現したものです。
当初、短い準備時間内で、完全に独自なコンセプトによるこのような展覧会を開催することは極めて困難である
と思われました。ここに、伊丹潤氏とEhwa Yoo、また上田雄三氏を始めとして、東京・パリ・ソウル各地で、私達
が強く実現を望んだこの展覧会の開催に力を尽くして下さった皆さんに心から感謝いたします。
ジャン=フランソワ・ジャリージュ
フランス学士院会員
ギメー美術館館長
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